アメリカで弁護士を選ぶ際には、何を基準にすれば良いのでしょうか?経費が重要な要素であるのは間違いありませんが、 時と場合によっては、経費面だけでの判断は難しいこともあります。
ここでは、弁護士選びの際に参考になるいくつかの基準についてご説明します。
1.学位(ジュリスドクター)
アメリカ合衆国で裁判官、検事、又は弁護士になるためには、州ごとに行われるバー又はバーイグザムと呼ばれる試験に合格しなければなりません。 バーの受験には、大学卒業後認定されたロースクールに進学し、 3年間の大学院プログラムであるジュリスドクター(Juris Doctor: JD)の取得が求められており、ニューヨーク等ごく少数の例外的な州を除き、JDなしの受験は認められません。このJDは他のアメリカの大学と同じ3年履修の学位であり、これがあればアメリカ合衆国内どの州であっても弁護士を開業する試験を受験できます。
アメリカ合衆国内で実際に法律実務を担当する弁護士を選ぶ際には、優秀なアメリカ人学生との競争を経てランクの高いロースクールに入学し、 さらに良い成績を収めて大規模な法律事務所に勤めているかどうかが、選択の参考になるでしょう。
2.ロースクールランキング
次に考慮すべき要素は、卒業したロースクールの難易度ランキングです。一般的なビジネス雑誌などに掲載されているランキングの判定には、 さまざまな要素が多く含まれています。従って入学難易度を純粋に比較するには、一般的なランキングを参照するのではなく、 入学審査に直接に関係する要素のみを用いた方がより適切です。この入学難易度のランキングのリストはあまり普及していませんが、 一般のランキングの中から、ロースクール入学時のテストであるロースクールアドミッションテスト(LSAT)と、 大学の成績評価基準であるグレードポイントアベレージ(GPA)を抜き出して簡単に作成できます。
例えば、私の卒業したブリガム・ヤング大学(BYU)ロースクールは、USNews2021のランキングで全米37位になっていますが、 LSATとGPA(ともに上位25%)のみを使って判定すると、 最高ランクであるLSAT166以上かつGPA3.86以上のロースクール群(Yale, Stanford, Harvard, NYU, Berkeley, Duke, BYU)に位置します。
3.異なる文化・習慣の理解度
日系企業や在留邦人の方々がアメリカ人弁護士に対して抱きやすい不満の一つが、日本文化・習慣の理解不足です。日本人には日本人の、アメリカ人にはアメリカ人の文化・習慣があり、そうした違いは時に仕事上の様々な摩擦を引き起こす原因となります。弁護士は、クライアントの立場に立って仕事を進め、裁判所で弁護を行い、交渉をまとめていくものです。 もし日本人の文化・習慣の理解なくクライアントの代理をしたとすると、クライアントは相手方に対する対応・調整だけでなく、自分サイドに立っているはずの弁護士に対する対応・調整までしなくてはなりません。
こういったスキル及び知識を身に付けている弁護士かどうかは、日本国内の日本企業で少なくとも3年間、 理想としては5年間の正社員経験の有無で見当が付きます。
4.コミュニケーション
弁護士にはクライアントを代理し、その意向を実現する責任がありますが、弁護士の中にはこの本来のあり方から逸脱し、クライアントの意向と異なる業務の進め方をする人もいます。 こういった行為は、クライアントは法律の素人であるから最終的には自分の判断の方が成功につながるという考えや、クライアントに時間をかけてさまざまなオプションを説明することを疎んじる態度からきていると言えるでしょう。 しかし弁護士はいくら実力があっても、最終的なゴールをクライアントに納得して頂き、 そこに至るまでの細かい選択について「すべてお任せします。」と言われない限り、 クライアントにきちんと選択できるオプションとリスクを事前に説明し、了解を得た上で業務を進める必要があります。
自分の依頼している弁護士がどのようなタイプかは、どれだけコミュニケーションをとっているかどうかで見極められます。 クライアントの意向を尊重する弁護士は、必要な情報をタイムリーに連絡し、判断を仰ぐことを厭わずに仕事を進めているはずです。