「なぜユタ州なのですか?」

私がユタ州ソルトレークで弁護士を開業していると告げると、 多くの方が不思議に思うことでしょう。しかし、実はユタだからこそ、日系企業のクライアントに喜んで頂ける仕事ができるのです。 実際に、東証一部の上場企業から設立されたばかりの企業まで、ユタ州にある私の事務所には全米各地、及び日本全国からご依頼が届いております。 ユタ州を選んだ一番の理由は、多国語を話せる優秀な弁護士が、リーズナブルなレートで法律業務を提供しているからです。 もちろん、それ以外にも多くの要因がありますが、ここでは、主に弁護士報酬についてご説明します。

弁護士報酬を抑えることは、クライアントだけの問題ではなく、弁護士との共同作業だと私は考えています。案件の難易度にもよりますが、当事務所では基本的に、他の法律事務所さんに比べてお手頃な価格での業務提供が可能です。また状況に応じて、他のパートナーやアソシエートに仕事を分担してもらうこともありますが、その際は弊社のポリシーに沿って仕事を進めてくれる弁護士とだけ組むようにしています。

ただいくら低価格な報酬でも、業務の質が悪くては本末転倒になってしまいます。高いサービスレベルを保ちながらも、リーズナブルなコストで法律業務を提供しなければ、クライアントの皆様に喜んで頂くことはできません。この実現のために、MtBookでは提携先として、まずカートン&マッコンキー国際総合法律事務所を選びました。当事務所は、多国籍の強大なクライアントから法律業務を担当するように依頼されてきたことで発展し、 今でもそのクライアントに対してかなりの業務を提供しています。 そうした安定的なクライアントのおかげで、他の事務所と比較してもマーケティングに労する経費や手間がかからず、 さらに世界中でご提供している法律業務において高品質を保つため、常に一流のロースクール出身の優秀な弁護士だけを雇用しています。 こうした様々な工夫が、廉価かつ高品質の法律業務の提供が可能にし、例え同じチームとして訴訟を担当するパートナーがスタンフォード大学卒やハーバード大学ロースクール卒であっても、リーズナブルな価格を保つことができるのです。そしてその後業務が拡大していくにつれて、当グループでも世界中の様々な弁護士と協力する機会が増え、今では数多くの国々において信頼のできる法律事務所や弁護士と連携するようになりました。

それでは、実際どのようにして弁護士報酬を低く抑えているかという秘密を解き明かします。

1.大都市で開業しない

弁護士の最大の経費は、事務所の維持費です。家賃、光熱費、通信費、雑費等は毎月高額になります。 これらの経費は、最終的には弁護士報酬の一部としてクライアントが負担しています。 ソルトレークと大都市のオフィス、それぞれの家賃と単位床面積辺りのオフィス賃貸料を同等の条件で比べると、 ソルトレークのほうが安いというのは言うまでもありません。

さらに、法律事務所を維持するために必要なスタッフの給与も大きな要因となります。受付、秘書、アシスタント、 ITスタッフ等に関して、ニューヨークであってもソルトレークであっても優秀な人材は見つかりますし、 所在地によって提供する法律業務の質に大きな影響を与えるものではありません。 以上から、物価の違いが弁護士報酬へも大きく影響するのは明らかであって、オフィスをソルトレークに構えることで、報酬を低く抑えられます。

2.レートの高い弁護士とは組まない

もちろん、裁判等ユタ州以外のライセンスが必要な場面も出てきます。 そんなとき、ユタ州の弁護士に依頼しても対応できないのではと心配されるかもしれませんが、実は案外そうでもないのです。

まず、訴訟がらみの案件であっても、証拠開示等を行う過程で和解することがほとんどであり、実際に訴訟まで至ることは少ないです。 従って、レートの高い弁護士に案件の全ての過程を通して依頼する必要はありません。万一訴訟になっても、 当事務所にはカリフォルニア州、ニューヨーク州を始め、多くの州のライセンスを持っている弁護士がおり、 一定以上の額の訴訟であれば、ユタから出張しても最終的には費用が安上がりになることが多いのです。 さらに、必要となれば訴訟の部分だけを大都市の弁護士に担当させるようにしています。こういったアレンジで、 かなりの弁護士費用が節約できます。案件が大きければ大きいほど、その効果は絶大です。案件の内容と規模にもよりますが、 大都市の事務所に依頼した場合の2分の1、上手くいけば3分の1の経費で済むことも不可能ではありません。

通常弁護士は、大型案件や高度な内容の案件の依頼を受けた場合、チームを組んで仕事を分担します。 当事務所の弁護士たちのレートは、既に説明したように大口のクライアント一定的にいるため、ユタ州の中でも低いほうですが、 私は一緒にチームを組む弁護士を、その中でも特に信頼できる人に予め決めています。 優秀な弁護士でも、レートが高ければ私のポリシーに反するからです。優秀で高額を要する弁護士は当たり前ですが、 様々な努力をして、優秀でもリーズナブルなレートを保っている弁護士を理想とすべきだ、と私は考えています。

3.高い家賃をできるだけ払わない

 高い家賃をできるだけ払わない方法は、いくつかあります。まず、事務所内にはできるだけ個人専用のオフィスを設定しないようにすることです。 これは、専用のオフィスを持つと経費が掛かりレートを押し上げる要因になるからです。 ユタは物価が安く家賃も大都市に比べるとかなり負担は軽いのですが、それでも不動産関係費用はかなりの額になるのは間違いありません。 業務内容によってはオフィスにいない時間が多い弁護士もいますし、アソシエートやパラリーガルも工夫次第でスペースを共有することは十分可能です。

また、オフィスビルも高層階ほど家賃が高くなりますので、クライアントとの会議スペースだけは高層階に設置して、 弁護士のオフィス、バックオフィスは家賃の安い低層階に設けたり、倉庫スペースを離れた場所に設置したり、 デジタルデータでの書類・書籍等の保管や管理をしたりするなど、家賃を低く抑えるさまざまな工夫をしています。

4.無駄な会議をしない

私は、昔から無駄な会議をできるだけ避けるようにしています。 クライアントのために会議をする際、全ての時間に全ての弁護士が必ず必要な訳ではありません。 あるときには弁護士A, B, Cが必要でも、別のときには弁護士B, D, Eが必要になることもあります。 しかし、論点ごとに弁護士が出たり入ったりすることは現実的ではなく、結局必要な弁護士が全ての時間参加することになり、 そうしたコストはクライアントにチャージされるかもしれません。

私の仕事の進め方は、私が中心になり全ての業務の進捗を把握し、必要であれば専門的な部分は専門家として経験の深い弁護士に分担させて、 私が進捗を管理するというものです。そうすれば、関係者全員が集まって会議をする機会を最小限にし、その時間をクライアントにチャージする必要もなくなるからです。

5.ロースクールローンを残さない

ロースクールのランクが、弁護士報酬に大きく影響を与えていることは自明の理です。 ランキングの高いロースクールを優秀な成績で卒業した弁護士は、通常大規模な事務所に勤務して高額な報酬を得ます。 熾烈な競争を勝ち残ってきたのですから、クライアントも納得して支払うのでしょう。 ところが、ランクの高い全てのロースクールが経費も同様に高い訳ではなく、ランクが高くとも授業料の安い州立大学等もあります。 ポイントは、ロースクール3年間の授業料、生活費等の総計が、できるだけ低くなるように学校を選択したかどうかです。 これは、ロースクールを卒業した後に残る多額の借金に直接影響を及ぼします。ロースクールを含め大学院からの卒業生のほとんどは、 スクールローンと呼ばれる借金を背負って社会に旅立つのです。

ロースクールを卒業すると、一般の大学卒業生よりも上乗せされた、プレミアムと呼ばれる報酬を得ます。そして3年間の授業料をこのプレミアムで割った数字を出すと、どれくらいの期間で経費を回収できるかがわかります。 もちろん短ければ短いほど良いのですが、回収期間が10年、15年というのはざらに見受けられます。 興味のある方は、ビジネス雑誌などにビジネススクールの経費と、それをどれくらいの期間で回収しているかという統計が掲載されていますので、参考にしてみて下さい。ロースクールも傾向としては、ビジネススクールと大差はないはずです。 ちなみに私の母校(ロースクール&ビジネススクール)のブリガム・ヤング大学(BYU)のビジネススクールは、 ビジネスウィークで最短で回収できるとしてトップにランクされています。

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